皆さん、こんにちは。社会保険労務士あかつき事務所の出口です。
この記事では、有給休暇の付与日を統一するためにはどうすればいいのかを解説しています。
年次有給休暇の斉一的取扱い
年次有給休暇は、入社後6か月を経過すると発生するため、入社日の異なる労働者が複数人いる事業場では、年次有給休暇の付与日が複数存在することになります。
会社の規模が大きくなり雇用する労働者の数が増えればそれだけ年次有給休暇の管理が負担となってきます。
そこで年次有給休暇の管理を簡易にするため、下記の要件を満たすことを条件に、全労働者の年次有給休暇の付与日を同じ日に統一することが可能となっています。
※ 斉一的取扱い:平成6年1月4日基発1号
① 有給休暇付与の条件である8割出勤の算定については、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすして計算する
有給休暇の付与は、有給休暇付与日より前1年間(最初の付与については、6か月間)について、その期間の所定労働日の8割以上出勤しなければ、年次有給休暇は付与されません。
しかし、年次有給休暇の斉一的取り扱いを行うには、それにより年次有給休暇の付与が短縮された期間のすべてについて出勤したものとしてカウントする必要があります。
例えば、本来の年次有給休暇の付与日が9月1日である場合で、有給休暇の付与日を4月1日に統一した場合は、9月1日から翌年3月31日までの出勤率については、実際の欠勤日数をカウントして計算し、短縮された4月1日から8月31日までの期間については、欠勤はなかったものとして計算する必要があります。
② 翌年度以降も、初年度で繰り上げた期間と同じ、又はそれ以上の期間、法定の年次有給休暇の付与日より繰り上げること
年次有給休暇の斉一的取扱いを実施した場合は、毎年同じ日に付与し続けるか、または前回繰り上げた期間よりも長い期間について繰り上げる運用をする必要があります。
③ 最初の年次有給休暇付与日(雇入れから6か月経過日)が、繰り上げた年次有給休暇付与よりも前にくる場合は、本来の付与日に付与すること
例えば、付与日を9月1日に統一したような場合で、最初の年次有給休暇付与日(雇入れから6か月経過日)が7月1日に到来する場合は、7月1日に最初の年次有給休暇を付与する必要があります。
以後の付与については、毎年9月1日になります。
斉一的取扱いの例
斉一的な年次有給休暇の発生日を毎年「4月1日」としたときの具体例
・雇入れ日が1月1日の労働者(6カ月経過日は10月1日)
⇒ 1月1日~3月31日については実際の出勤率を算定し、4月1日~9月30日については全労働日について労働したものとみなし、合算して8割以上の出勤率があれば、4月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。
・雇入れ日が9月1日の労働者(6カ月経過日は3月1日)
⇒ 最初の6か月については、実際の出勤率を算定し、3月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。(当該年次有給休暇の発生日は、4月1日ではありません。)
⇒ 次の1年間は、3月1日~3月31日については、実際の出勤率を算定し、4月1日~翌年2月28日については全労働日について労働したものとみなし、合算して8割以上の出勤率があれば、4月1日に11労働日の年次有給休暇が付与されます。
年次有給休暇の斉一的取り扱いを運用するには、就業規則でその内容をしっかりと定める必要があります。
その他、下記の記事では、年次有給休暇の詳しい解説を行っています。
年次有給休暇、正しく理解できていますか?
投稿者プロフィール

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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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