最近、髪型に関するニュースをよく見聞きします。
男性のポニーテールはよろしくないとかなんとか。
他人の髪型や容姿についてあれこれ言う趣味は私にはありまりません。
しかし、世間では、奇異な髪型は社会秩序を乱すといった言説もあります。
何をもって奇異なのか、奇異な髪型により乱される社会秩序とはなんなのかはわかりせんが…
話は変わりますが、会社の服務規律で、社員の髪型について制約を設けたいという要望をいただくことがあります。
世間一般の例とは異なり、会社の事情によっては、社員の髪型を制約することが必要な場面もあり得ます。
本稿では、会社が社員の髪型に制約を設けることができるのかについて解説していきたいと思います。
1 会社の企業秩序を維持する権利
まず第一に、社員は、服務規律を守る義務を負ってます。
服務規律とは、「社員が職務に従事する際に遵守しなければならない行動規範」のことをいいます。
社員が服務規律を守る義務を負う根拠として判例では、
「一般に、使用者は、労働契約関係に基づいて企業秩序維持のために必要な措置を講ずる権能を持ち、他方、従業員は企業秩序を遵守する義務を負っている」
と説明しています。(企業秩序論)
とはいえ、企業秩序維持のためであれば服務規律により無制限に社員の行動を制約できるかといえばそうではありません。
これには限界があります。
その限界として、「個人の自由との衝突」があげられます。
2 日本国憲法から見る髪型の自由
日本国憲法では、個人の表現の自由・思想良心の自由が保障されています。
また判例では「個人がどのような髪型にするかは、その人の趣味、嗜好に属する事柄であり、本来的に個人の自由である」としています。(自由権的基本権の保障)
しかし、日本国憲法が定める自由権的基本権の保障規定は、国家と個人との関係を規律するものであるため、国家ではない会社と社員との関係(私人間)については、これを直接適用することはできないと解釈されています。
それでは、会社が社員の個人の自由である髪型を制約することについて憲法は関知しないということになるのでしょうか?
判例では、日本国憲法は、私人間には直接適用されることはないものの、私人間の関係を規律する民法一般条項の解釈に日本国憲法の人権保障の趣旨を導入しており、間接的に憲法の効力が私人間にも及ぶことになる(間接適用説)としています。
したがって、服務規律による企業秩序維持のための髪型に関する制約については、日本国憲法の理念を反映した民法上の限界があることになるのです。
3 企業秩序と個人の自由のバランス
一方で会社には企業秩序を維持する権利があり、他方で社員には個人の自由があります。
両者についてどのようにバランスをとるのかが問題となります。
このバランスを図る基準は、髪型に対する制約の目的と手段について合理性があるかです。
これらが否定されると、髪型を制約する服務規律は効力がなくなります。
目的の合理性
髪型を制約する目的としては、会社の事業遂行上の必要性が求められます。
無目的に髪型を制約している場合は、その効力は否定されます。
手段の合理性
手段の合理性を判断するにあたっては、①目的に比して②規制対象が広すぎたり、③規制方法が厳格すぎたりしないかを確認します。
目的に合理性が認められたとしても、その手段に合理性がないと判断された場合は、髪型を制約する復規律の効力は否定されます。
4 まとめ
会社の服務規律に、髪型を制約する規定がある場合、目的の合理性や手段の合理性を見直し、これらがない場合であるならば、その規定を削除し、労働者の個人の自由を尊重するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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