皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。
最近、新型コロナウィルス感染症の影響により、アルバイトのシフトを減らしたいという相談を受けることがあります。
今回は、会社がアルバイトのシフトを減らすにあたって、労務管理上注意すべき点について解説します。
1 シフトが既に確定しているか否かの確認
アルバイトのシフトを減らす前に、まずは既にシフトが確定し労働日が特定されいているのか、又はまだ確定していないのかを確認します。
シフトが確定しているか否かで対応が異なるためです。
2 シフトが既に確定している場合
シフトが既に確定し労働日が特定されいている場合、労働者には当該労働日に労務を提供する義務が発生しており、その日に労務を提供すれば使用者から賃金の支払を受ける権利が発生します。
この場合、当該労働日を使用者の都合で勝手に休日とし、シフトを減らすことはできません。
もし使用者が一方的に当該労働日を休みにした場合、その日は「使用者の責めに帰すべき事由による休業」として当該労働日に係る賃金支払の義務を免れないことになります。
このときの支払うべき賃金額は、民法第536条第2項の規定による休業か、又は労働基準法第26条の規定による休業かにより異なります。
その違いは、下記のとおりです。
① 民法536条第2項の規定により賃金の全額支払う必要があるケース
民法536条第2項は、「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行(労務の定提供)することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行(賃金の支払)を拒むことができない」と規定しています。※括弧は筆者注
当該規定による「責めに帰すべき事由」とは、故意・過失又はこれと信義則上同視できる事由を意味し、この事由がある場合は、労働者を休ませた日でも賃金の全額を支払う必要があります。
※ただし、この規定は、労使間の契約又は就業規則で排除することができます。
② 労働基準法第26条の規定により平均賃金の60%の休業手当を支払うケース
労働基準法第26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならない。」と規定しています。
この場合の「使用者の責めに帰すべき事由」とは、民法536条第2項の規定の「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由」よりも広くとらえられますています。
したがって、使用者の故意・過失がなくても経営に関する理由であれば、不可抗力でない限り本条の適用の範囲となります。
3 シフトがまだ確定していない場合
シフトがまだ確定していない場合においては、労働契約上、所定労働日数が確定しているか否かにより対応が異なります。
① 労働契約上、所定労働日数が決まっている場合
労働契約上、所定労働日数・所定労働時間が決まっている場合、シフトを減らすことは、労働契約の変更を意味します。
したがって、使用者が一方的に労働契約を変更することはできず、労働者の個別の同意が必要となります。(就業規則により所定労働日数が決まっている場合は、就業規則の変更の手続を要し、不利益変更にも留意が必要です。)
この場合に、労働者の同意を得ずに使用者が勝手にシフトを減らすと、その減らされた日については、使用者の責めに帰すべき事由による休業として労働者への賃金支払義務は免れません。
支払う賃金については上記「シフトが既に確定した場合」と同様の基準により支払われます。
② 労働契約上、所定労働日数が決まっていない場合
労働契約上、所定労働日数が決まっていないような場合は、シフトを減らすことも可能です。
しかし、具体的に労働日数を定めていなくても目安が設定されていたり、今までの勤務のなかで、一定の労働日数が確保されているような場合は、黙示的に労働日数が決まっていたとみなされる場合があります。
そのような場合において、シフトを減らすと、やはり休業手当の支給が必要になります。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか。
経営状態の悪化が原因でシフトを減らす場合でも、多くは賃金(休業手当を含みます。)の支払が必要なケースになります。
賃金の支払額について判断ができない場合は、当事務所までご連絡ください!
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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