会社に無断で自転車通勤をしていたら

皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。

最近、新型コロナウィルス感染症の影響により、満員電車を避けるため自転車通勤をする人が増えてきました。

自転車通勤に関して会社が認めている場合もありますが、なかには自転車通勤を禁止されているにもかかわらず無断で自転車通勤をしている人もいます。

今回は、労働者の視点から会社に無断で自転車通勤をするとどのようなリスクがあるのかについて解説していきたいと思います。

リスク1:通勤手当の返還義務

公共交通機関を利用する等により通勤手当の支給を受けている労働者が、会社に無断で自転車通勤をし、引き続き通勤手当の支給を受けている場合、就業規則で定められた通勤手当の支給基準によっては、会社に通勤手当を返還する義務が生じます。

①返還の義務がないケース

就業規則で、

・通勤手当をどのような通勤方法であっても一律に支給する

・通勤方法の指定がなく自宅の最寄り駅から会社の最寄り駅までの定期代を支給する

などのような支給基準が定められている場合は返還の義務はないでしょう。

②返還の義務があるケース

就業規則で

・通勤手当は通勤に必要な「実費」を支給する

などのように定められている場合は、支給を受けた通勤手当を返還する義務があります。

リスク2:懲戒処分

会社が就業規則で自転車通勤を禁止おり、かつその違反行為が懲戒処分の対象となっている場合、無断で自転車通勤をすることで懲戒処分を受ける可能性があります。

懲戒処分の内容としては、戒告などの軽微な懲戒処分ですみ、いきなり懲戒解雇や出勤停止処分などの重い懲戒処分を受けることはないと思われます。

しかし、戒告を受けてもなお無断で自転車通勤を繰り返すような場合には、より重い懲戒処分を受けることはあり得ます。

リスク3:詐欺罪

就業規則の定めにより自転車通勤には通勤手当が支給されないとわかっていながら、通勤手当を詐取する目的で支給を受けていたような場合は、刑法の詐欺罪に問われる可能性があります。

リスク4:通勤中のケガ

通勤中にケガをした場合は、会社の指定した通勤方法であるか否かに関わらず、法定の要件を満たす通勤であれば通勤災害に該当し、労災保険から保険給付が受けられます。

したがって、無断で自転車通勤をしていることをもって直ちに通勤災害が認めれられないということはありません。

しかし、自転車通勤は他の通勤方法よりもケガをしやすく、また、通勤災害と認められない下記の事由に該当しやすいという特徴があるので注意が必要です。

通勤災害に該当しないケース

①通勤経路が合理的でない場合

必要以上に遠回りをしたような場合は、通勤災害と認める要件である「合理的な経路」による移動に該当せず、通勤災害が認められないおそれがあります。

自転車通勤を運動の代わりにしようとしている場合であってもなるべく遠回りをしないようにしましょう。

②通勤の方法が合理的でない場合

通勤災害が認めれれるには、通勤方法が合理的な方法であることが求められます。

自転車通勤をすることで、他の通勤方法よりもはるかに長い通勤時間となるような場合では自転車通勤が合理的な方法による通勤とされない可能性があり、通勤災害が認めれられない可能性があります。

③通勤経路を逸脱・中断した場合

通勤途中に寄り道をしたり、通勤とは関係のない行為をするとそれ以降の移動は通勤とはみされなくなり、ケガをしても通勤災害に該当しなくなります。

※通勤災害の関連記事は、コチラをご覧ください。⇒「通勤途中にケガをしたときの対応

まとめ

いかがでしたでしょうか。

このように無断で自転車通勤をすると様々なリスクが伴います。

自転車通勤をする際は、まずは会社の就業規則を確かめ、会社に報告してから自転車通勤をするようにしましょう。

投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。