従業員を雇用したときの手続きは?

皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。

今回は、労働者を雇用した際にどのような手続きが必要かについて解説します。

1 誓約書の提出を求める

1-1 誓約書とは?

使用者は、まず内定者に対して、誓約書を提出させます

誓約書の趣旨は、入社意思の最終確認入社後に労働者が負う義務の遵守を誓約させることにあります。

入社後、労働者に遵守させる必要のある義務には、下記のものがあります。

服務規律の遵守

企業秩序の維持

在職中又は退職後の秘密保持義務、競業禁止義務

インターネットやSNSの利用ルール

会社貸与のパソコン、携帯などの電子機器の使用ルール

など

1-2 誓約書を提出させる意義

誓約書に記載される労働者の遵守すべき義務は、就業規則などにも規定されていることがほとんどであるため、労働者が誓約書を提出しないことで、これらの義務を免れることはありません。

では何故あえて誓約書を提出させるかというと、誓約書にサインさせることで労働者に自分が負うべき義務を自覚させることができるからです。

会社が回復困難な損害を被るおそれがある義務違反(例えばSNSの利用ルールに反した行為による炎上など)の予防として社員に義務を自覚させることは非常に重要です。

1-3 誓約書を提出しない社員への対応

求職者が誓約書を提出しない場合は、どのように対応するべきでしょうか。

ひとつは、誓約書の提出が入社の条件である旨を就業規則などで定めておくことで提出しない求職者を不採用にする方法があります。

また入社後に誓約書を提出させることになっていないときは、労働者が誓約書を提出しない場合に、業務命令においてその提出を促します。

それでもなお提出しない場合は、懲戒処分をします。最終的には、本採用を拒否する処分を行います。

2 身元保証契約

身元保証契約とは、雇用した従業員が、横領や無断欠勤などを行い会社に損害を与えた場合に、本人以外に身元保証契約をした身元保証人がその損害を賠償する契約のことをいいます。

身元保証契約をするには、以下の点、注意が必要です。

①身元保証契約の有効期限は5年が上限

②損害賠償額の上限(極度額)をあらかじめ定める

なお、雇用した従業員に身元保証書を提出させるかは、会社の任意です

3 労働条件の明示

3-1 明示すべき労働条件

労働者にとって労働契約を締結してもどのような条件で雇用されているのかが分からない状態では、安心して働くことができません。

また、労働条件の明示がないことにより後日トラブルになることが考えられます。

そこで労働基準法では、使用者に対して、労働契約の締結に際し、一定の労働条件を明示する義務を課しています。(労働基準法第15条第1項前段)

明示すべき労働条件

明示すべき労働条件には、必ず明示しなければならない絶対的明示事項と、その定めがある場合のみ明示することが求められる対的明示事項があります。

絶対的明示事項

①労働契約の期間に関する事項

②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

③就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

⑤賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

相対的明示事項

⑦退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

⑧臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

⑨労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

⑩安全及び衛生に関する事項

⑪職業訓練に関する事項

⑫災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

⑬表彰及び制裁に関する事項

⑭休職に関する事項

※なお上記のほか、短時間労働者を雇入れた際には、下記の事項も明示する義務があります。(パートタイム労働法第6条:特定事項

・昇給の有無

・退職手当の有無

・賞与の有無

・短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

3-2 明示の時期

明示が義務付けられている労働条件は、下記のタイミングで通知する必要があります。

明示の時期

①絶対的明示事項、及び相対的明示事項

労働契約の締結時に通知することが義務付けられています。

労働契約の締結時とは「内定採用時」に限らず、「契約更新時」、「出向時」、「転籍時」、「会社が合併等をした時」、「定年後再雇用時」にも、これらを新たな労働契約を締結する場面ととらえて通知の義務があります。

なお、労働条件変更時には、労働条件の明示義務はないとされていますが、トラブル予防の観点から明示しておくほうが良いでしょう。

②特定事項

雇入れた後、速やかに通知する必要があります。

3-3 通知の方法

絶対的明示事項(⑤昇給に関する事項を除く。)については、①書面の交付FAXを利用して送信電子メール等の送信(労働者が記録を出力して書面を作成できる者に限る。)により明示しなければなりません。

昇給に関する事項及び相対的明示事項は、書面の交付等は求められておらず、口頭による明示だけで足ります。

しかし、やはりトラブル予防の観点から書面の交付等で明示するほうが良いでしょう。

2-4 明示した労働条件と実際の労働条件が相違する場合

明示した労働条件と事実が相違する場合においては、労働者は、即時に労働条件を解除することができます。(労働基準法第15条第2項)

4 各種保険の加入

労働者を雇用すると各種の社会保険に加入する義務が発生する場合があります。

加入手続には期限がありますので、期限までに届出を作成し提出するようにしましょう。

4-1 はじめて労働者を雇用する場合

初めて労働者を雇用する場合、使用者は少なくとも労災保険に加入する義務が発生します。(=保険関係が成立する)

使用者は、保険関係が成立した日から10日以内に「保険関係成立届」を提出しなければなりません。

またその際、当該年度に支払う労働者の賃金の概算額を求めて、「概算保険料申告書」と併せて提出する必要があります。

なお、概算保険料は、保険関係が成立した日の翌日から50日以内に納付する義務があります。

4-2 雇用保険の加入義務がある者を雇用した場合

雇用する労働者の1週間の所定労働時間が20時間以上でかつ、31日以上雇用されることが見込まれる場合は、雇用保険加入義務があります。(※適用除外に該当する場合は、手続不要となります。)

この場合、「被保険者資格取得届」を当該労働者を雇用した日の属する月の翌月10日までに、公共職業安定所に提出する必要があります。

さらに、当該事業所で初めて雇用保険加入義務のある者を雇用した場合は、「適用事業所設置届」を雇用した日の翌日から10日以内に公共職業安定所に提出する必要もあります。

4-3 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務がある者を雇用した場合

適用事業所に使用される労働者は社会保険に加入する義務があります。

※ 詳しい社会保険の加入基準については下記の記事をご確認ください。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)
社会保険加入要件①~適用事業所に使用される者~
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
社会保険加入要件②~4分の3基準とは?~

社会保険に加入する義務のある労働者を雇用した場合は、「社会保険被保険者資格取得届」を雇用した日の翌日から5日以内に年金事務所に提出する必要があります。

5 健康診断を受けさせる

事業者が、常時使用する労働者(※)を雇用したときは、事業者が費用を負担する形で当該労働者に対して医師による健康診断を受けさせる必要があります。(労働安全衛生規則第43条)

なお、当該健康診断を受ける時間の賃金については、支払うことが望ましいとはされているものの、支払義務があるとまではされていません。

※「常時使用する労働者」の基準は、通達平成26年基発0742第2号を参照ください。

6 安全衛生教育を行う

労働者自身にも安全衛生ついての知識を身に着けさせ、労働災害を未然に防ぐ目的で、事業者は、労働者を雇用した際に安全衛生教育を行う必要があります。(労働安全衛生法59条第1項)

雇入れ時の教育

全業種のすべての労働者を対象に下記の教育を行います。(労働安全衛生規則第35条)

①機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること

②安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること

③作業手順に関すること

④作業開始時の点検に関すること

⑤当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること

⑥整理、整及び清潔の保持に関すること

⑦事故時等における応急措置及び退避に関すること

⑧上記に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

なお、事業者は、上記の事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができます。

7 まとめ

いかがでしたでしょうか。

労働者を雇用する際、誓約書の作成を求めたり、労働条件の通知、各種保険の手続、健康診断や安全衛生教育を行うなど、実に多くの作業を要します。

また、雇用する労働者が増えれば増えるほど、他に必要な手続きも増えていきます。

労働者の入退社に係る各種の手続きでお困りでしたら、当事務所にご相談ください。

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投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。