それ、偽装請負じゃないですか?

皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。

令和3年11月4日、東リ(株)の工場で労働者を「偽装請負」の状態で働かせいていたと認定する大阪高裁の控訴審判決がありました。

今回は、この大阪高裁が認定した「偽装請負」について解説します。

1 そもそも「請負」とは?

「請負」とは、仕事を発注する事業者(注文事業者)の依頼を受け、その仕事の完成を目的に労務を提供する契約のことをいいます。

注文を受けた事業者(請負事業者)のもとで働く労働者は、請負事業者との間で雇用関係があり、請負事業者の指揮命令に従って注文者からの仕事をおこないます。

注文者は、請負事業者が雇用している労働者に対して、仕事の指示等を行うことはできません。

2 労働者派遣との違いは?

請負と似て非なるもので「労働者派遣」があります。

「労働者派遣」とは、派遣元企業に雇用される労働者が、派遣先事業者の指揮命令を受けて、当該派遣先事業者のために労働に従事する契約をいいます。

請負との違いは、労働者が、派遣先事業者(請負でいうところの注文者)の指揮命令を受けて労務を提供している点です。

※ 請負と労働者派遣の具体的な区分の基準は、平成 24 年厚生労働省告示第 518 号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」をご確認ください。

3 偽装請負

「偽装請負」とは、事業者間で形のうえでは請負契約を締結しているが、その実態は請負事業者の労働者を注文者の指揮命令のもとで働かせる労働者派遣であるものをいいます。

労働者派遣により労働者を働かせるには、労働者派遣法上の許可が必要であり、労働者が派遣先企業で働く期間に制限があるなど様々な規制を受けます。

偽装請負は、この労働者派遣法の制限を潜脱する目的で行われます。

4 偽装請負に該当すると

労働契約申し込みのみなし制度

労働者派遣法等の適用を免れる目的で偽装請負を行なった場合、派遣先企業が派遣労働者に対してその時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の条件で労働契約の申込みをしたものとみなされます。

当該派遣先企業との直接雇用を希望する派遣労働者は、当該偽装請負が終了した日から1年を経過する日までの間に、労働契約の申し込みを承諾することで、当該派遣先企業との労働契約が成立します。(労働者派遣法第40条の6)

罰則

偽装請負により労働者派遣法上の許可を得ずに労働者派遣を行なっている場合、 派遣元企業及び派遣先企業は、厚生労働大臣から指導・助言又は勧告を受ける可能性があります。(労働者派遣法第48条の2、第49条)

また、許可を得ずに労働者派遣事業を行なった企業は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。(労働者派遣法第59条)

5 まとめ

いかがでしたでしょうか。

故意に偽装請負をしている場合に限らず、知らずに労働者派遣を請負としている場合もあります。

請負と労働者派遣の違いをしかっり理解し、無許可で労働者派遣をしてしまわないように気を付けましょう。

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投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。