皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。
今回は、期間を定めて雇用している契約社員について、病気を理由に契約期間途中で解雇をすることができるのかについて解説します。
1 契約社員とは
「契約社員」とは、法律上の定義はありませんが、一般的に雇用期間の定めがある社員のことをいいます。
契約社員の雇用期間が満了した場合、契約の更新がなければその時点で雇用関係が終了します。
反対に言えば、雇用期間が満了するまでは雇用関係が保障されているということになります。
2 雇用期間の途中で解雇することができるのか
契約社員であっても「やむを得ない事由」があれば解雇をすることはできます。(労働契約法第17条)
この「やむを得ない事由」とは、 契約期間が満了するまでは雇用関係が保障される法の趣旨から、期間の定めのない社員に求められる解雇の有効性の基準に比べて厳格に解されています。
判例では、「やむを得ない事由」の基準を、「契約期間終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外かつやむを得ない事態が発生したと認めるに足りる事情」としています。(安川電機八幡工場事件:福岡高裁H14.9.18判決)
この基準から言えば、契約社員が予期せず病気となり、かつ期間満了までその病気が治る見込みもなく、他の業務にも転換することができないような場合は、「やむを得ない事由」に該当することになり、契約期間の途中であっても解雇は可能と考えられます。
3 病気の理由が業務に起因する場合
病気を理由に解雇する場合に気を付けなければならないのは、当該病気が業務に起因するもの、すなわち労働災害に該当する場合です。
当該病気が労働災害であるときは、労働基準法第19条第1項の規定により当該病気について「療養のため休業する期間」と「当該病気が治癒してから30日間」については解雇することはできないことになっています。
特にうつ病などの精神疾患の場合は、当該病気が業務に起因するのか判断が難しいため、解雇の判断はより慎重に行う必要があります。
(※精神障害の労災認定基準は、コチラをご確認ください。)
なお、解雇の制限期間であっても、当該期間内に契約期間が満了すれば、雇用関係は終了します。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は病気の場合について解説しましたが、他の理由で契約社員の解雇を検討されている場合も慎重に有効性を判断する必要があります。
解雇が難しいような場合は、退職勧奨をしたり、期間満了を待ったりするなどの対応が必要となります。
「退職勧奨」「雇止め」については別のコラムにて解説していますのでそちらも併せてご覧ください。
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
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写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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