大入り袋には社会保険料がかからないのか?

皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。

今回は、大入り手当を支給した場合に、社会保険料の計算にどのような影響があるのかを解説します。

1 大入り袋とは

大入り袋とは、会社が一定の売り上げや客数を超えた場合等に、従業員に対して支払うボーナスのことをいいます。

大入り袋を支払う基準は、会社によって異なりますが、その基準の内容によって、社会保険料の計算に影響がでてきます。

2 社会保険料計算上の取扱い

社会保険料の計算の基礎となるのは「報酬」と「賞与」です。

したがって、大入り袋が報酬または賞与のいずれかに該当する場合は、社会保険料の計算に影響がでてきます。

※ そもそも社会保険に加入していない人には関係してきません。(社会保険加入の義務については下記の記事を参考にしてください。)

社会保険(健康保険・厚生年金保険)
社会保険加入要件①~適用事業所に使用される者~
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
社会保険加入要件②~4分の3基準とは?~

2-1 「報酬」・「賞与」の社会保険料の計算

「報酬」「賞与」とは何かを解説する前に、「報酬」「賞与」についての社会保険料の計算の仕方について解説します。

「報酬」に対する社会保険の計算

報酬に対する社会保険料の計算は、下記の手順で行います。

① 毎年4月から6月まで(報酬支払基礎日数17日未満の月を除く)に支払われる報酬の平均額を標準報酬月額等等級表に当てはめて仮定的な報酬の月額(これを「標準報酬月額」といいます)を決定します。

② 上記①で算定した標準報酬月額を同年9月から翌年8月までの各月の標準報酬月額とします。

③ 各月の標準報酬月額に社会保険料率を乗じて得た額が、報酬に対する社会保険料となります。

「賞与」に対する社会保険料の計算

賞与に対する社会保険料の計算は、下記の手順で行います。

① 賞与額の千円未満の端数を切り捨てます。(これを「標準賞与額」といいます。)

② 上記①で算定した標準賞与額に社会保険料率を乗じて得た額が、賞与に対する社会保険料となります。

大入り袋が、「報酬」または「賞与」に該当した場合は、上記の計算をもって社会保険料を算定し、納付する必要があります。

2-2 「報酬」とは何か

社会保険料の計算の基礎となる「報酬」は、法律で、「賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3か月を超える期間ごとに受けるものは、この限りではない。」と定義されています。

したがって、大入り袋が、①労働の対償である場合、②臨時に受けるものでない場合、③3か月を超える期間ごとに受けるものでない場合の全てに該当するときは、「報酬」として扱われることになります。

①労働の対償であるか

「労働の対償」とは、事業主から支給されるものが、労務を提供した対価として労働者が受けているものであることをいいます。

大入り袋は、会社が一定の売り上げを達成したときなどに支給される性格のものですが、これは労働者が労務を提供しているからこそ支給を受けられるのであって、労働の対償であるといえます。

ただし、大入り袋を支給する基準が就業規則などで定められておらず、事業主が全くの任意恩恵的に支給するような場合は、労働の対償ではないとされ報酬には該当しないことになります。

②臨時に受けるものでないか

上記①で大入り袋が労働の対償であると認められるような場合であっても、それが「臨時に受けるもの」に該当すれば報酬として扱われません。

「臨時に受けるもの」の定義は、支給事由の発生が稀であるか、又は不確定なものであるとされています。

したがって、大入り袋の支給事由が毎年発生したり、決まった時期に支給されているようであれば、その大入り袋は臨時に受けるものではなく「報酬」に該当します。

③3か月を超える期間ごとに受けるものでないか

「3か月を超える期間ごとに受けるもの」とは、年に支給されるもの回数が3回以下であるものをいいます。

したがって、大入り袋が、年に3回以下しか支給されていない場合は、報酬には該当しません。(この場合、後述する「賞与」に該当するかを検討します。)

2-3 「賞与」とは何か

社会保険料の計算の基礎となる「賞与」は、法律で、「社会保険料の計算の基礎となる「報酬」は、法律で、「賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるものをいう。」と定義されています。

したがって、上記2-2①の「労働の対償」であっても、③の「3か月を超える期間ごとに受けるもの」であるような場合は、「賞与」として扱われることになります。

なお、このような場合でも、上記2-2②の「臨時に受けるもの」に該当すれば、賞与にも該当しないことになります。

3 まとめ

以上みてきたとおり、大入り袋を社会保険の計算の基礎に含めるかは否かは、まず、大入り袋が「臨時に受けるもの」に該当するか否かを検討する必要があります。

「臨時に受けるもの」に該当しない場合には、「報酬」か「賞与」のいずれかに該当するかを検討します。

そして、それぞれの社会保険料の計算方法に従って計算して、適切に社会保険料を納付するようにしてください。

投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。