最低賃金徹底解説!

1 最低賃金額の決め方

時間当たりの額により決定

最低賃金は、1時間あたりの金額で定められます。(最低賃金法第3条)

例えば、「1時間○○円」のように定めます。

地域別に定める最低賃金

最低賃金は、全国各地域について決定され、各都道府県ごとにその額が異なります。(地域別最低賃金

そして、どの都道府県の最低賃金が適用されるかは、労働者の住んでいる場所ではなく、事業場の所在地によって決まります。

例えばA県に住む労働者がB県の事業場で働いている場合、B県の最低賃金が適用されことになります。

なお、地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、また正社員、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。

※ 各都道府県の詳しい賃金の額は、「厚生労働省のホームページ」をご確認ください。

特定の産業について定める最低賃金

最低賃金は地域別最低賃金のほか、関係労使の任意の申出により、同一の都道府県内の特定の産業について定めることもできます。(特定最低賃金

例えば、特定の産業として、北海道では「乳製品」「鉄鋼業」などが、愛知県では、「自動車小売業」などが、沖縄県では、「糖類製造業」などが定められており、この特定の産業に従事する労働者に対して特定最低賃金が適用されます。

また、特定最低賃金の額は、当該特定最低賃金の適用を受ける使用者の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金の額を上回るもでなければならないとされています。(最低賃金法第16条)

そして最低賃金法第6条で、「二以上の最低賃金の適用を受ける場合は、最低賃金額のうち最高のものがで適用される」と規定していため、特定最低賃金が地域別最低賃金に優先して適用されることになります。

最低賃金額が変更される時期

最低賃金は、毎年10月頃に変更されます。

地域別最低賃金については、変更がある年がほとんどですが、特定最低賃金については、変更ない年もあります。

注意しないといけないのは、各都道府県によって、変更の効力発生時期が違うということです。

例えば、A県の地域別最低賃金は10月1日から、B 県の地域別最低賃金は10月6日から変更する、などです。

※ 各都道府県の詳しい変更日は「厚生労働省のホームページ」をご確認ください。

最低賃金の減額の特例

使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、下記の労働者の最低賃金額は、一定の減額率によって減額した額にすることができます。

①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者

単に障害があるだけでは足らず、その障害が従事しようとする業務の遂行に直接支障を与えていることが明白であり、かつその支障の程度が著しい場合に限り、減額の許可の対象となります。

減額率の算定方法

1 比較対象労働者の選定

同じ事業場で働く他の労働者のうち、減額の対象となる障害者(減額対象労働者)と同一又は類似の業務に従事していて、かつ、減額しようとする最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われている者の中から、最低の能力を有する者を比較対象労働者として選定します。

2 減額できる率の上限となる数値の算出

比較対象労働者の労働能率を100分の100とした場合の、減額対象労働者の労働能率を算出し、その差が、減額率の上限となります。

例:減額対象労働者の労働能率が100分の80の場合、その差である20%が減額率の上限になる。

3 減額率の設定

2で算出した減額率を上限として、減額対象労働者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験等を総合的に勘案して、減額率を定めます。

②試用期間中の者

試用期間中の者であって、次のように試用期間中に減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性があるものに限り、減額の許可の対象となります。

1 申請のあった業種又は職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること

2 申請のあった業種又は職種の本採用労働者に比較して、試用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在することなど減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性があること

なお、減額ができる試用期間は、6ヶ月間を限度とします。

減額率の算定方法

1 減額できる率の上限となる数値

減額できる率の上限となる数値は20%です。(最低賃金法施行規則第5 条)

2 減額率の設定

20%を上限として、減額対象労働者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験等を総合的に勘案して、減額を定めます。

③認定職業訓練を受ける者

職業能力開発促進法施行規則第9 条に定める①普通課程の普通職業訓練②短期課程(職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させるためのものに限る)の普通職業訓練③専門課程の高度職業訓練を受ける者で、職業を転換するために職業訓練を受けるもの以外の者については、減額の許可の対象となります。

ただし、職業訓練であっても、訓練期間を通じて1日の生産活動に従事する時間(所定労働時間から認定を受けて行われる職業訓練の時間(使用者が一定の利益を受けることとなる業務の遂行の過程内において行う職業訓練の時間を除く。)を除いた時間)が、所定労働時間の3分の2程度以上である訓練年度や訓練期間が2 年又は3 年であるものの最終年度については原則として許可の対象とはなりません。

減額率の算定方法

 減額できる率の上限となる数値  

1日の平均職業訓練時間数 ÷ 1日の平均所定労働時間 で求められる数値が、減額できる率の上限となる数値です。

2 減額率の設定

1で算出した減額率を上限として、減額対象労働者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験等を総合的に勘案して、減額率を定めます。

④軽易な業務又は断続的労働に従事する者

以上、最低賃金を減額できる場合を述べてきましたが、私個人の意見を述べさせていただくと、経営状況により仕方がない場合を除き、この減額の許可申請はあまりお勧めしません。日本の最低賃金は欧米に比べてはるかに低く、それ故に労働生産性が低いことが問題となっています。事業が健全に発展していくためにも、なるべく賃金を上げていく方向で会社を経営していくべきだと考えるからです。

2 最低賃金額の効力

最低賃金を下回る賃金

最低賃金額に達しない賃金を定めている労働契約は、その賃金の定めについては無効となります。(最低賃金法第4条)

※労働契約が全体が無効となるわけではありません。

無効となった賃金の定めについては、最低賃金と同額の定めをしたものとして扱われます。

これにより、以前から違反状態が続いている会社では、最低賃金額との差額を遡って支給する必要があります。

賃金の時効は、3年(執筆時現在)ですので、過去3年分の差額を計算し、支給する必要があります。

最低賃金額以上かの判断

「時給者」の給与が最低賃金額以上であるかを判断するには、時給額と最低賃金額を比べればわかります。

では、月給者・日給者・出来高制の給与が最低賃金額以上であるかの判断はどのようにすればいよいでしょうか?

①月給者の場合

下記の計算式により、月給額を1時間あたりの金額に直して、最低賃金額と比べます。

月給額の1時間あたりの金額

月給額 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 = 1時間あたりの金額 ≧ 最低賃金額

※「1カ月の平均所定労働時間」は、( 365日 ー 1年間の休日の合計 ) ÷ 12か月 × 1日の所定労働時間 で求められます。 

②日給者の場合

下記の計算式により、日給額を1時間あたりの金額に直して、最低賃金額と比べます。

日給額の1時間あたりの額

日給額 ÷ 1日の所定労働時間 = 1時間あたりの金額 ≧ 最低賃金額

※「1日の所定労働時間」が日によって異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数とする。

③時給と月給(諸手当)が混在する者の場合

「上記①で計算した月給の1時間あたりの額」と「時給額」の合計を、最低賃金額と比べます。

④出来高制の場合

下記の計算式により、出来高制の額を1時間あたりの金額に直して、最低賃金額と比べます。

出来高制の1時間あたりの額

賃金算定期間において出来高払制によって計算された賃金の総額 ÷ 当該賃金算定期間において出来高払制によって労働した総労働時間数

最低賃金の対象から除く賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金であり、下記の賃金は最低賃金の計算の基礎からは除外されます。

①臨時に支払われる賃金

②1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

③割増賃金

④精皆勤手当

⑤通勤手当

⑥家族手当

これらの賃金の額を除いた額が最低賃金以上になるようにしてください。

最低賃金を下回る場合の罰則

最低賃金を下回る賃金しか支払っていない使用者には、下記の罰金が科せられます。

「地域別最低賃金」の不払いは、50万円以下の罰金が科せられます。(最低賃金法第40条)

「特定最低賃金」の不払いについては、労働基準法第24条に規定する全額払いに違反し、30万円以下の罰金が科せられます。(労働基準法第120条)

3 派遣労働者・出向労働者の最低賃金

派遣労働者については、派遣先の事業場において適用されている地域別最低賃金又は特定最低賃金が適用されます。(最低賃金法第13条、第18条)

出向労働者についても同様に、出向先の事業場において適用されている地域別最低賃金又は特定最低賃金が適用されます。

4 労働者への周知義務

使用者は、下記の事項を常時作業場の見えやすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。(最低賃金法第8条、最低賃金施行規則第6条)

①最低賃金の適用を受ける労働者の範囲、

②最低賃金額

③最低賃金の対象から除く賃金

④効力発生日

上記事項の記載があればどのような書式でも差し支えありません。

会社で独自に作成したり、厚生労働省のポスタ―を使用するのもよいでしょう。

5 最低賃金額の変更にともなう注意点

最低賃金額の変更に伴い、労働者の賃金額を変更した場合は、下記の点に注意してください。

① 月額変更の対象となる可能性がある

② 残業代の単価の変更

③ 年次有給休暇取得日の賃金額の変更の可能性がある

6 まとめ

以上、最低賃金の制度を詳しく解説してきました。

あなたの会社は、最低賃金を下回っていませんか?

もし最低賃金を下回っている場合は、直ちに最低賃金額以上に改め、また違反していた部分の差額を遡って支給しましょう。

また、賃金は、労働者の勤労意欲に直結する事項です。

長年働いているにもかかわらず、賃金が最低賃金のままの労働者は、本来の力を発揮できていないかもしれません。

最低賃金を下回っていないから大丈夫とは思わず、これを機に、生産性の向上のため、賃上げを検討してみることをお勧めします。

投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。