皆様こんにちは。社会保険労務士の 出口 です。
今回は、所定労働時間が週40時間を超える契約の有効性について解説します。
1 週の法定労働時間は何時間?
1週間の労働時間は、労働基準法第32条の規定により、「1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」とされています。
この週40時間の労働時間を法定労働時間といい、使用者は、原則として、これを超える時間について労働をさせることはできません。
※ なお、特例対象事業場については、週44時間まで労働させることが可能です。
2 週の所定労働時間が40時間を超えた場合の取り扱い
2-1 契約の自動修正
では、労働契約で定めた労働時間(所定労働時間)が、週40時間を超えている場合、どのように取り扱われるのでしょうか。
この場合、労働基準法第13条の規定により週40時間を超えた時間は無効となり、当該契約は法定労働時間である週40時間に自動的に修正されることになります。
例えば、「1日8時間、週48時間」のような契約は、「1日8時間、週40時間」に自動修正されます。
2-2 給与との関係
上記のように労働時間が週48時間から週40時間に自動的に修正された場合、給与もそれに伴って減額することは可能でしょうか。
例えば、「1日8時間、週6日勤務(1週間48時間)で、月給24万円」との契約を交わしていた場合、週48時間が週40時間へと6分の5に縮減されたことに伴って、給与も24万円の6分の5の額(20万円)に減額してもよいのでしょうか。
判例では、「月給制は原則として、月当たりの通常所定労働時間の労働への対価として当該金額が支払われる旨の合意であるから、使用者が労働者に支払った月給は、労基法に従って修正された所定労働時間(週40時間)に対する対価として支払われたものと解するのが相当である。(令和元年6月27日:しんわコンビ事件)」とし、月給に関しては、週40時間に縮減されたことに伴い給与を減額することはできない取り扱いとなります。
2-3 残業代単価への影響
残業代単価は、月給制の場合、「 基本給 ÷ 月の平均所定労働時間 ×1.25 」で計算されます。
月の平均所定労働時間は、「 (365日-年間休日) ÷ 12か月 × 1日の所定労働時間 」で求められます。
上記の例で、週の所定労働時間が週48時間から週40時間が自動修正されると、「1日8時間、週5日勤務(週40時間)」となり勤務日が1日減少するため、「週6日勤務」としていた場合に比べ、年間休日が52日分多くなります。
これにより、月の平均所定労働時間も短くなって、月給制の残業代単価が増加することになります。
3 36協定届との関係
週40時間を超えて労働させることは違法ですが、労働基準監督署長に、労働基準法第36条の届け出(36協定届)をすることで、週40時間を超えて労働させることが可能となります。
しかしながらこの規定は、「36協定届を提出すれば、週40時間を超える契約を締結することが可能となる」という趣旨ではありません。
本規定は、「週40時間を超える時間の労働をさることは、本来、法律違反として罰則が科せられる(労基法第119条)が、36協定届を提出すればその罰則が免除される効果(免罰効果)が与えられる」という趣旨であり、契約の有効性の判断とは関係がないのです。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか。
貴社の労働契約は、法定労働時間を超えていませんか?
もし、法定労働時間を超えている場合は、残業代単価も間違っている可能性があります。
給与計算への影響や、残業代の遡及請求のリスクがありますので、この機に契約書の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
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写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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