皆様、こんにちは。社会保険労務士の出口勇介です。
今回は、令和4年10月の社会保険適用範囲の拡大について解説します。
1 社会保険の加入義務とは?
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、「適用事業所に使用される者」について加入義務があります。
「適用事業所」とは、
① 法人の事業所
② 個人経営で適用業種の事業の事業所で常時5人以上の従業員を使用する事業所
③ 上記①②に該当しない事業所で、適用事業所となるための厚生労働大臣の認可を得た事業所
のことをいいます。(※詳しい要件は、コチラをご確認ください。)
また、「適用事業所に使用される者」であれば誰でも社会保険に加入する義務があるわけではなく、
① 法人の役員で一定の要件を満たす者 (※ 詳しくはコチラ)
② 通常の労働者(正社員)
③ 4分の3基準を満たす者(※ 詳しくはコチラ)
④ 4分の3基準を満たさない短時間労働者のうち一定の者
のいずれかに該当する者で、
かつ、適用除外に該当ない者のみ社会保険の加入義務があります。(※適用除外については、コチラ)
2 社会保険適用範囲の拡大
2-1 「適用事業所」の範囲の拡大
令和4年10月から、適用用事業所の範囲が拡大されます。
具体的には、「個人経営で適用業種の事業の事業所で、常時5人以上の従業員を使用する事業所」について、従来、適用業種に含まれていなかった「士業」が追加されることとなりました。
これによって、個人経営の士業事務所で、常時、従業員(正社員だけでなく、パートなど全ての労働者を含みます。)を5人以上雇用している事務所については、令和4年10月から適用事業所となり、社会保険に加入する義務が発生することになります。
なお、個人経営の士業事務所の従業員であっても、通常の労働者(正社員)又は4分の3基準を満たす労働者(主に週30時間以上働く労働者)でない場合は、その者については社会保険の加入義務はありません。
また、個人経営の士業事務所の事業主も社会保険加入義務はない点に注意してください。
適用の対象となる士業の種類
適用の対象となる士業の種類は下記のとおりです。
・弁護士 ・沖縄弁護士 ・外国法事務弁護士 ・公認会計士 ・公証人 ・司法書士
・土地家屋調査士 ・⾏政書⼠ ・海事代理⼠ ・税理⼠ ・社会保険労務士 ・弁理⼠
2-2 「適用事業所に使用される者」の範囲の拡大
従来、適用事業所に使用される者で、社会保険への加入義務がある「4分の3基準を満たさない短時間労働者のうち一定の者」に該当するには、下表左の5つの要件をすべて満たす必要がありました。
令和4年10月からは、社会保険への加入義務がある「4分の3基準を満たさない短時間労働者のうち一定の者」の範囲が、下表右のように変更され、社会保険加入義務者の範囲が拡大されることとなりました。
従来の規定 | 令和4年10月からの規定 |
---|---|
① 事業主が同一であるすべての適用事業所での社会保険加入者の数の合計が、500人を超える企業であること | ① 事業主が同一であるすべての適用事業所での社会保険加入者の数の合計が、100人を超える企業であること |
② 週所定労働時間が20時間以上であること | ② 週所定労働時間が20時間以上であること(従来と変更なし) |
③ 報酬の月額が8万8000円以上であること | ③ 報酬の月額が8万8000円以上であること(従来と変更なし) |
④ 同一の事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること(勤続年数要件) | ④ 勤続年数要件は廃止 |
⑤ 学生等でないこと | ⑤ 学生等でないこと(従来と変更なし) |
なお、上記表右に該当する者が、令和4年10月前に家族の扶養に入っていることをもって、自身の社会保険加入義務が免除されることはありません。
この場合、年収が130万円未満であっても令和4年10月からは、家族の扶養から外れ、自身が社会保険の被保険者として社会保険保険料を納めることになります。
2-3 「適用除外の規定の一部改正」による範囲の拡大
従来は、適用事業所に使用される者であっても、「2カ月以内の期間を定めて雇用される者」は、適用除外に該当し、社会保険に加入する義務はありませんでした。(ただし、契約の更新などにより当初の契約期間を超えて引き続き雇用された者を除きます。)
令和4年10月からは、当初の雇用期間が2か月以内であったとしても
①就業規則、雇用契約書等でその契約が「更新される旨」、又は「更新される場合がある旨」が明示されている
又は
②同一の事業所で、以前に、「更新の可能性が明示されていない雇用契約」に基づいて雇用されている者が更新等によって、最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある
ような場合には、雇用契約開始時から社会保険への加入義務が発生するようになりました。
3 適用拡大前に準備しておくべきこと
社会保険の加入要件に該当するかは、一義的には就業規則や契約書等での取り決めから判断されることになりますが、就労の実態も判断材料となります。
したがって、契約上は、週20時間未満の労働時間であっても、実態として週20時間超の労働時間が続いているようであれば、新たな社会保険の適用範囲に入ってくる可能性がでてきます。この場合、社会保険に加入したくないと考えているのであれば、残業時間を減らすなどの対応が必要となってきます。
従業員には、早めに通知し、意向を確認しておきましょう。
また、社会保険に新たに加入することによって、扶養から外れる場合は、家族の会社にも予め通知しておきましょう。
4 まとめ
今回の社会保険の適用範囲の拡大の対象となった企業は、令和4年10月1日付で社会保険に加入の手続きをする必要がでてきます。
社会保険の加入手続にお困りの方は、社会保険労務士あかつき事務所までご連絡ください。
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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