皆様こんにちは。東京都八王子市の社会保険労務士あかつき事務所、代表の 出口勇介 です。
皆様は、社会保険の被保険者(加入者)が産前産後休業を取得した際に、社会保険料を免除することができる制度があることをご存じですか?
通常、産前産後休業期間中は、労働者に給与が支払われることはありません。
しかし、この場合でも、社会保険の被保険者については社会保険料を支払う義務は残っているのです。
これは、休業中の労働者にとって大きな負担となります。
そこで、会社が日本年金機構に申し出ることにより産前産後休業中の社会保険加入者の社会保険料を免除することができる制度が設けられています。
今回は、この産前産後休業期間中の社会保険料の免除について解説していきたいと思います。
なお、同様に育児休業等期間中の被保険者についても社会保険料の免除の制度がありますが、それについては別の記事で解説しています。
1 産前休業・産後休業とは
使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は、14週間)以内に出産する予定のある女性従業員が休業を請求した場合においては、当該女性従業員を就業させることができません。この期間の休業のことを産前休業といいます。(労基法65条1項)
また使用者は、出産日の翌日から原則として産後8週間の期間は、女性従業員を就業させることができません。この期間の休業のことを産後休業といいます。(労基法65条2項)
※ 「産前休業」は、産後休業とは異なり、女性従業員が休業の請求をする必要がある点に注意してください。
2 産前産後休業期間中の社会保険料の免除
2-1 免除されるには
事業主が、産前産後休業をしている社会保険の被保険者について「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構に提出することで、社会保険料(健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料)が免除されます。
この免除は、被保険者負担分だけでなく、事業主負担分も対象となります。
2-2 免除の対象となる期間
社会保険料が免除される期間は、産後休業が開始した日の属する月から産前産後休業の終了した日の翌日が属する月の前月までとなります。
また、この期間中に支払われた賞与に係る社会保険も免除の対象となります。
※ この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算するうえでは、保険料を納めた期間として扱われますので、事業主が免除を申し出たからといって、被保険者の不利になることはありません。
3 産前産後休業取得者申出書とは
3-1 どんな書類?
「産前産後休業取得者申出書」は、こんな書類です。↓
「産前産後休業取得者申出書」は、産前産後休業期間中に提出する必要があります。
3-2 産前産後休業取得申出書の書き方
「産前産後休業取得者申出書」の書き方を用紙の上から順番に説明します。
①「提出日」・「事業所整理記号」・「事業所所在地等」を記入します
※「事業所整理記号」は、数字とカタカナの組み合わせの記号です。事業所整理記号がわからない場合は、毎月、日本年金機構から送られてくる納入告知書などに記載されていますのでご確認ください。
② 「共通記載欄(取得申出)」(①~⑧及び⑨)を記入します
※ 「出産前に提出する場合」と「出産後に提出する場合」とでは、記入事項が異なります。また、出産後に提出する場合には、「出産予定日よりも前に出産した場合」と「出産予定日よりも後に出産した場合」とで、産後休業開始日の記入上の注意点が異なります。
【A:出産前に提出する場合の書き方】
【B:出産後に提出する場合の書き方:出産予定日よりも前に出産した場合】
【C:出産後に提出する場合の書き方:出産予定日よりも後に出産した場合】
4 産前産後休業取得者変更届とは
4-1 どんなときに必要か?
提出した産前産後休業取得者申出書の「⑤出産予定日」と「実際の出産日」が異なった場合は、「産前休業開始日」又は「産後休業終了予定日」が下の図のように変わるので、その旨を届け出るため日本年金機構に「産前産後休業取得者変更届」を提出する必要があります。
なお、出産予定日と実際の出産日は異なることが多いため、通常、出産前に産前産後休業取得者申出書を提出している場合は、産後休業休業取得者変更届も提出することになります。
出産後に産前産後休業取得者申出書を提出している場合は、「⑦産前休業開始日」・「⑧産前産後休業終了予定日」に変更は生じない(上記3‐2の②B・Cを参照)ため、産後休業取得者変更届を提出する必要はありません。
4-2 産前産後休業取得者変更届の書き方
「産前産後休業取得者変更届」は「産前産後休業取得者申出書」と同じ書式を利用し、上記3-2の「共通記載欄(取得申出)」の①~⑨を記載のうえ、⑪~⑭の欄をを記載することになります。
【A:出産予定日よりも前に出産した場合】
【B:出産予定日よりも後に出産した場合】
5 産前産後休業取得者終了届とは
5-1 どんなときに必要か?
「産前産後休業取得者終了届」は、産前産後休業取得者申出書の「⑧産前産後休業終了予定日」又は産前産後休業取得者変更届の「⑭産前産後休業終了予定日」よりも前に産前産後休業が終了した場合に提出する必要があります。
※ 上記4‐1の図の「青い矢印の最終日」、又は「産前産後休業取得者変更届を提出しているときは赤い矢印の最終日」よりも早く産前産後休業が終了した場合に産前産後休業取得者終了届の提出が必要になります。
5-2 産前産後休業取得者終了届の書き方
「産後休業取得者終了届」は「産前産後休業取得者申出書」と同じ書式を使用し、上記3-2の「共通記載欄(取得申出)」の①~⑨を記入のうえ、⑮の欄を記入することになります。
6 まとめ
産前産後休業取得者申出書は、被保険者の社会保険料を免除しながらも、将来の年金額を算出するうえでは、従前の社会保険料を納付したものとして計算されます。
また、会社負担分も免除になりますので、社会保険の被保険者が産前産後休業を期間に入ったら、忘れずに提出するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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