皆様こんにちは。東京都八王子市の社会保険労務士あかつき事務所、代表の 出口勇介 です。
皆様は、社会保険の被保険者(加入者)が育児休業等を取得した際に、社会保険料を免除することができる制度があることをご存じですか?
通常、育児休業等期間中は、労働者に給与が支払われることはありません。
しかし、この場合でも社会保険の被保険者には社会保険料を支払う義務は残っています。
これは、休業中の労働者にとって大きな負担となります。
そこで、事業主が日本年金機構に申し出ることにより育児休業等期間中の社会保険加入者の社会保険料を免除することができる制度が設けられています。
今回は、この育児休業等期間中の社会保険料の免除について解説していきたいと思います。
なお、同様に産前産後休業期間中の被保険者についても社会保険料の免除の制度がありますが、それについては別の記事で解説していますので、そちらをご参照ください
1 育児休業等とは
「育児休業」とは、労働者が、その子を養育するためにする休業のことをいいます。(育児・介護休業法2条1号)
育児・介護休業法に定める育児休業には、下記の種類があります。
① 1歳未満の子を養育するための育児休業
労働者は、その養育する1歳未満の子について育児休業を取得することができます。
この育児休業は、2回まで分割して取得することができます。
② パパ・ママ育休プラス
父母がともに育児休業を取得している場合は、子が1歳2か月になるまでの期間について育児休業をすることができるようになります。
なお、出生日以後の産前産後休業期間と育児休業期間(出生時育児休業を含む)を合計して1年間が育児休業を取得できる最長期間となります。
③ 出生時育児休業
産後休業をしていない労働者が、出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間以内の子と同居し、養育している場合に、4週間を限度として取得することができる休業のことをいいます。(令和4年10月1日に新設された制度です。)
出生時育児休業は、2回に分けて取得することが可能です。
出生時育児休業の特徴は、労働者が出生時育児休業期間中の就労を希望する場合に、労使協定の締結をしたうえで、個別に使用者との話し合いで育休中の就労可能な日を決定できることです。
④ 子が1歳6カ月になるまでの育児休業の延長
労働者又はその配偶者が原則として子が1歳の誕生日の前日に育児休業を取得している場合で、保育所等に入所を希望しているが入所できないなどの一定の延長事由に該当するときは、子が1歳6カ月になるまで育児休業を延長することができます。(育児・介護休業法第5条第3項)
この場合の育児休業は、原則として子の1歳の誕生日から取得する必要があります。
ただし、配偶者が当該育児休業の延長制度を利用して子の1歳の誕生日に育児休業を取得している場合には、子どもの1歳の誕生日よりも後の日を取得日とすることができます。
この1歳の誕生日後に育児休業を取得する場合は、遅くとも配偶者の育児休業が終了予定日の翌日以前でなければならない点に注意してください。
⑤ 子が2歳になるまでの育児休業の延長
上記④により、労働者又はその配偶者が子が1歳6カ月になる日の前日に育児休業を取得している場合で、なおも保育所等に入所を希望しているが入所できないなどの一定の延長事由に該当しているときは、子が2歳になるまで育児休業を延長することができます。
この場合の育児休業は、原則として子の1歳6カ月になる日から取得する必要があります。
ただし、配偶者が当該育児休業の延長制度を利用して子の1歳6カ月になる日に育児休業を取得している場合には、子どもが1歳6カ月になる日よりも後の日を取得日とすることができます。
この1歳6カ月になる日よりも後の日に育児休業を取得する場合は、遅くとも配偶者の育児休業が終了予定日の翌日以前でなければならない点に注意してください。
上記①~⑤の育児休業を取得することができる労働者には制限がありますが、本記事では割愛します。詳しくは、別の記事で解説していますので、そちらをご参照ください。
⑥育児・介護休業法に規定する育児休業よりも長い期間の育児休業
使用者は、育児・介護休業法に定める上記①~⑤の育児休業以外に、就業規則等で定めることにより、「育児介護休業法に規定する育児休業の期間よりも長い期間の育児休業」を認めることもできます。
この「育児休業法に規定する育児休業よりも長い期間の育児休業」と、「育児休業法に定める育児休業」をあわせて「育児休業等」といいます。
2 育児休業等期間中の社会保険料の免除
2-1 免除されるには
事業主が、育児休業等をしている社会保険の被保険者について「育児休業等取得者申出書(新規・延長)」を日本年金機構に提出することで、社会保険料(健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料)が免除されます。
この免除は、被保険者負担分だけでなく、事業主負担分も対象となります。
2-1 免除の対象となる期間
社会保険料が免除される期間は、育児休業等が開始した日の属する月から育児休業等の終了した日の翌日が属する月の前月までであり、免除期間の上限は、最長で子が3歳になるまでとなります。
※ この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算するうえでは、保険料を納めた期間として扱われますので、事業主が免除を申し出たからといって、被保険者の不利になることはありません。
令和4年(2022年)10月1日の改正
令和4年(2022年)9月30日までは、上記の免除の対象となる期間の規定により「育児休業等の開始日」と「育児休業等の終了日の翌日」が同月内にある場合、当月の社会保険料は免除の対象となりませんでした。
しかし、令和4年(2022年)10月1日から取得する育児休業等については、① 「育児休業等の開始日」と「育児休業等の終了日の翌日」が同じ月内にある場合であっても、② 当月内に14日以上(休業期間中に就業予定日がある場合は、当該就業日を除く。また、土日等の休日も期間に含む。)の育児休業等を取得した場合については、当該月の標準報酬月額に係る社会保険料(毎月支払う社会保険料)が免除されることになりました。
※下記のケース(出生時育児休業の例になります。)では、①と②の条件を満たすので、免除対象月となります。↓
なお、育児休業等期間中の賞与にかかる社会保険料の免除についても改正がされました。
詳しくは、こちらの記事をご確認ください
3 育児休業等取得者申出書(新規・延長)とは
3‐1 どんな書類?
「育児休業等取得者申出書(新規・延長)」は、こんな書類です。↓
育児休業等取得者申出書(新規・延長)は、「1歳未満の子を養育するための育児休業(出生時育休業を含む)」「保育所待機等の特別な事情がある場合の1歳から1歳6か月に達するまでの育児休業」「保育所待機等の特別な事情がある場合の1歳6か月から2歳に達するまでの育児休業」「1歳から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業に準する休業」を取得するごとに提出する必要があります。
なお、「育児休業等取得者申出書」は、各育児休業等開始日から各育児休業等終了後1か月以内に提出する必要があります。
3‐2 育児休業等取得申出書(新規)の書き方
「産前産後休業取得者申出書(新規)」の書き方を用紙の上から順番に説明します。
①「提出日」・「事業所整理記号」・「事業所所在地」等を記入します
※「事業所整理記号」は、数字とカタカナの組み合わせの記号です。事業所整理記号がわからない場合は、毎月、日本年金機構から送られてくる納入告知書などに記載されていますのでご確認ください。
② 「共通記載欄(新規申出)」(①~⑮の必要箇所)を記入します
※「育児休業等開始年月日(⑩欄)」と「育児休業等終了(予定)年月日(⑪欄)」の翌日が、同月内にない場合と、同月内にある場合とでは記入の仕方が異なりますので、ご注意ください。
※ ⑫欄「就労予定日数」について、就労予定期間を時間単位で定めた場合は、期間内の就労予定時間数を一日の所定労働時間数で除した数(小数点以下切り捨て)を記入します。
③ 「C.育児休業等取得内訳」を記入します
この欄は、「育児休業等開始年月日」と「育児休業等終了(予定)年月日」の翌日が同月内にあり、かつ、複数回に分割して取得する場合にのみ記入します。
3-3 育児休業等取得者申出書(延長)の書き方
育児休業等取得者申出書(延長)は、最初に育児休業等取得者申出書(新規)を提出している場合に、①育児休業等終了(予定)日から別の取得区分の育児休業に変更(出産時育児休業⇒1歳未満の子を養育するための育児休業、子が1歳6カ月又は2歳になるまでの育児休業の延長)をする場合や、②各育児休業終了予定日の繰り下げを行う場合に提出します。
育児休業等取得者申出書(延長)の書き方は、上記3-2の共通記載欄(新規申出)の①~⑮の必要事項を記入したうえで、さらに「A.延長」の⑯、⑰欄を記入します。
※ 共通記載欄(新規申出)の「⑪育児休業等終了(予定)年月日」については、最初に記入した日を記入してください。
※ 共通記載欄(新規申出)の「⑫育児休業等取得日数」、「⑬就業予定日数」は、延長後の育児休業等の終了日の翌日が、⑩欄の育児休業開始日と同月内の場合のみ記入してください。
4 育児休業等取得者終了届とは
4-1 どんなときに必要か
「育児休業等取得者終了届」とは、育児休業等取得者申出書の申出の際に記入した終了予定日よりも早くに育児休業等を終了した場合に提出する必要があります。
4-2 育児休業等取得者終了届の書き方
「育児休業等取得者終了届」は、育児休業等取得者申出書と同じ書式を使用し、上記3-2の「共通記載欄(取得申出)」の①~⑮の必要事項を記入のうえ、さらに「B.終了」の⑱、⑲欄を記入します。
5 まとめ
育児休業等取得者申出書は、被保険者の社会保険料を免除しながらも、将来の年金額を算出するうえでは、従前の社会保険料を納付したものとして計算されます。
また、会社負担分も免除になりますので、社会保険の被保険者が育児休業を期間に入ったら、忘れずに提出するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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