皆様こんにちは。東京都八王子市の社会保険労務士あかつき事務所、代表の 出口勇介 です。
12月といえば、賞与の季節ですね。
そして賞与を支払った際に忘れてはならないのが「賞与支払届」です!
会社が社会保険加入者に賞与を支払った場合、賞与の支給日から5日以内に賞与支払届を日本年金機構に提出する必要があります。
これを怠ると後の調査で未提出が発覚し、保険料をさかのぼって納付しなければならない事態になる可能性があります。
また、賞与支払届を提出しないと、従業員の将来受け取れる年金が少なくなるなどの不利益が発生します。
賞与支払届は非常に大切な書類なのです。
今回は、そもそも賞与とは何か、賞与支払届の書き方、賞与の保険料の計算、賞与を支給しなかった場合などについて解説していきたいと思います。
※ 本稿は、協会けんぽに加入している会社を対象としている点にご注意ください。
1 賞与支払届が必要な「賞与」とは何か?
賞与支払届を提出するには、「賞与」とは何か、その定義を正確に知る必要があります。
なぜなら、賞与として支払っているつもりが、実は、その性質は「報酬」だったというようなケースがあり、その場合、賞与支払届ではなく、別の手続き(算定基礎届)が必要になってくるからです。
では、法律上、「賞与」と「報酬」はどのように定義されているのでしょうか。
その違いをみていきましょう。
報酬と賞与の定義
① 報 酬
「賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び、3か月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」(健康保険法第3条第5項、厚生年金保険法第3条第3項)
② 賞 与
賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるもの」(健康保険法第3条第6項、厚生年金保険法第3条第4項)
まとめると、
「報酬」は、労働の対償(対価)として受けるもののうち、3か月以下の期間ごとに受けるものとなります。
つまり、年4回以上受ける労働の対償が報酬に該当します。
※臨時に受けるものは除きます。
例えば、「毎月支給する給与」、「年4回(例えば、3月、6月、9月、12月)支給するインセンティブ」などです。
「賞与」は、労働の対償(対価)として受けるもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるものとなります。
つまり、年3回以下しか受けられない労働の対償が賞与に該当します。
例えば、「年3回のインセンティブ(例えば、3月、7月、12月に支給)」、「年2回の賞与(例えば、夏季賞与と冬季賞与)」などです。
※ なお、賞与を年2回と報奨金を年2回支給するような場合において、それぞれの名称が異なっていも性質が同一であれば、それは同一のものとして判断されるため、この場合、合計で年4回の労働の対償と判断され、「報酬」に該当します。
2 賞与支払届とは
3-1 どんな書類?
「賞与支払届」は、原則として賞与支払月の前月に日本年金機構から自動的に届きます。
こんな書類です↓
賞与を支払った場合は、この書類に必要事項を記載して、賞与支払日から5日以内に日本年金機構に提出する必要があります。
「賞与支払届」は、日本年金機構のホームページからもダウンロードすることができるので、そちらを使用して提出することができます。
また、電子申請にて賞与支払届を提供する場合は、届いた書類を使う必要はありません。
3-2 書き方は?
賞与支払届の書き方を用紙の上から順番に説明します。
①「提出日」・「事業所整理記号」・「提出者記入欄」を記入します
※「事業所整理記号」は、数字とカタカナの組み合わせの記号です。事業所整理記号がわからない場合は、毎月、日本年金機構から送られてくる納入告知書などに記載されています。
② 「④ 賞与支払年月日(共通)」を記入します。
※ 事業所における賞与支給日を記入してください。
③ 各被保険者の情報と賞与の支給額を記入します。
※ 賞与支払届1枚につき、被保険者10名まで記入することができます。10名を超えて被保険者がいる場合は、適宜、同じ用紙に同様の内容をご記入ください。
3 賞与にかかる保険料の計算
社会保険の被保険者に賞与を支給すると、その賞与には、事業主と被保険者の双方に社会保険料がかかります。
賞与に係る社会保険料の計算については、下記の記事に詳しく説明していますので、そちらをご確認ください。
賞与にかかる社会保険料の計算
「賞与支払届」を提出すると、賞与支払月の翌月において、通常の社会保険料の納付額に、賞与分の納付額を合算した額の納付書が届きます。(自動引き落としにしている場合は、合算額が引き落とされます。)
4 賞与を支給しなかった場合は?
4-1 賞与を支給しなかった場合に行う手続き
令和3年4月から日本年金機構に登録している賞与支払予定月に、すべての被保険者及び70歳以上被用者に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」を提出する必要があります。
※ 日本年金機構への賞与支払予定月の登録は、「新規適用届」の提出の際に行うか、又は「事業所関係変更(訂正)届」によって登録した賞与予定月の変更を行うことができます。
また、令和3年4月からは、以前は賞与支払届と一緒に送られてきた「賞与支払届等に係る総括表」が廃止となり提出が不要になりました。
4-2 どんな書類?
「賞与不支給報告書」はこんな書類です。↓
4-3 書き方は?
賞与不支給報告書の書き方を、用紙の上から順番に説明します。
①「提出日」・「事業所整理記号」・「事業所番号」・「提出者記入欄」を記入します
② 「賞与支払情報」を記入します
③ 賞与の支払予定月の変更、又は賞与の支払予定がなくなった場合は、「変更」も記入します
5 まとめ
賞与支払届は、年に数回しか行わない手続きで忘れがちですが、非常に重要な手続きです。
必ず期限までに提出するようにお願いいたします。
当事務所では、賞与支払届のみご依頼いただくことも可能です。
提出の失念を防止したい、本業が忙しくて手続きをしている暇がない等、賞与支払届の手続きを代行して欲しいご要望のある方は、当事務所までお問い合わせください。
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お問い合わせ投稿者プロフィール
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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