4 年次有給休暇の付与日数等
原則的な付与日数
年次有給休暇の発生要件を満たした場合は、雇入れ日から6カ月を経過した日に10労働日の年次有給休暇が付与され、以降1年後ごとに10労働日に所定の日数を加えた新たな年次有給休暇が付与されます。(労働基準法第39条第1項、第2項)
なお、新たな付与日数は20労働日(加算日数は10労働日)が限度であるため、勤続年数6年6か月から1年ごと(7年6か月、8年6か月…)の付与日数は20労働日で足ります。
継続勤務期間 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
加算日数 | - | +1日 | +2日 | +4日 | +6日 | +8日 | +10日 |
なお、「8割以上の出勤率」については、年次有給休暇の発生要件ではありますが、付与日数の加算要件ではありません。
したがって、例えば、雇入れ日からの継続勤務期間6か月について8割以上の出勤率がなく10労働日の年次有給休暇が付与されなかったとしても、6か月が経過した日から1年6カ月の間の1年間の出勤率が8割以上であれば、継続勤務期間1年6か月を経過した日に「11労働日」の年次有給休暇が付与されることになります。
比例付与
労働日数・労働時間の短い労働者については、下記のような原則的な付与日数よりも少ない週所定労働日数に応じた日数の年次有給休暇が付与されることになります。(比例付与:労働基準法第39条第3項)
比例付与対象者と付与日数
① 比例付与対象者
比例付与の対象となる労働日数・労働時間の短い労働者とは、
1週間の所定労働日数が4日以下(週以外の期間で所定労働日数を定めている場合は、1年間の所定労働日数が216日以下)であり、
かつ 1週間の所定労働時間が30時間未満 の労働者です。
※ なお、比例付与の対象となるか否かは、各継続勤務期間の経過した日(各年次有給休暇の発生日)において、上記の要件を満たしているかで判断されます。
② 付与日数
比例付与対象者の年次有給休暇の付与日数は、下記の計算式により算出されます。
原則的な付与日数 × 週所定労働日数 ÷ 5.2日 = 付与日数(端数は切捨て)
例:継続勤務期間6か月経過した日において、週の所定労働日数が3日(週労働時間は30時間未満)の労働者
10労働日 × 3日 ÷ 5.2日 = 5.76…日 ⇒ 5日
付与日数の繰越し
年次有給休暇の権利は、各年次有給休暇の権利が発生する勤続年数の経過日から起算して2年間を経過すると時効により消滅します。(労働基準法第119条)
したがって、年次有給休暇は、翌年まで繰越しが認められます。
例えば、継続勤務期間6か月を経過した日に発生した10労働日の年次有給休暇は、継続勤務期間2年6か月を経過する日までの間に請求することができ、さらに継続勤務期間1年6か月を経過した日に11労働日の年次有給休暇が付与された場合において、最初の10労働日の年次有給休暇を1日も消化していなかったとすると、当該1年6か月を経過した日に、10労働日+11労働日=21労働日の年次有給休暇の権利があることになります。
なお、このとき「繰り越された10労働日の年次有給休暇」と「1年6か月を経過した日に付与された11労働日の年次有給休暇」については、いずれを優先して消化するべきなのか、労働基準法には定めがありません。
そのため、時効が迫っている「繰り越された年次有給休暇」から消化するほうが労働者には有利ではありますが、就業規則において、今回付与された年次有給休暇を優先的に消化すると定めることも可能です。
※ 民法第488条の規定(弁済の充当)に従うとの見解もありますが、債務の履行を観念しない年次有給休暇の請求に妥当するかは疑問があります。
時間単位の付与
年次有給休暇は、心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることを目的としていることから、1労働日を単位として付与することを原則としています。
しかし、年次有給休暇の取得促進や時間単位での取得の希望があるなど理由から、労使協定の締結を条件に、1年に5労働日を限度として、時間単位の年次有給休暇を付与することが認められています。
時間単位年次有給休暇の労使協定
時間単位年次有給休暇を実施するために締結する労使協定には、下記の事項を定める必要があります。
・ 時間単位年次有給休暇を与えることができる労働者の範囲
・ 時間単位年次有給休暇の付与日数の上限(5日以内が限度。前年度の繰越分を含む。)
・ 時間単位年次有給休暇の1日の時間数(1日の所定労働時間(端数は切上げ)以上の時間とすること)
・ 1時間以外の時間を単位として付与する場合のその時間数
なお、当該労使協定は、労働基準監督署長に届出ること要しません。
斉一的取扱い
入社日の異なる労働者が複数人いる事業場では、年次有給休暇の発生する日が複数存在することになり管理が大変です。
そこで年次有給休暇の管理を簡易にするため、下記の要件を満たすことを条件に、全労働者の年次有給休暇の発生日を統一することが可能です。(斉一的取扱い:平成6年1月4日基発1号)
① 出勤率の算定にあたっては、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること
② 翌年度以降も、初年度で繰り上げた期間と同じ、又はそれ以上の期間、法定の年次有給休暇の発生日より繰り上げること
斉一的取扱いの例
斉一的な年次有給休暇の発生日を毎年「4月1日」としたとき
・雇入れ日が1月1日の労働者(6カ月経過日は10月1日)
⇒ 1月1日~3月31日については実際の出勤率を算定し、4月1日~9月30日については全労働日について労働したものとみなし、合算して8割以上の出勤率があれば、4月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。
・雇入れ日が9月1日の労働者(6カ月経過日は3月1日)
⇒ 最初の6か月については、実際の出勤率を算定し、3月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。(当該年次有給休暇の発生日は、4月1日ではありません。)
⇒ 次の1年間は、3月1日~3月31日については、実際の出勤率を算定し、4月1日~翌年2月28日については全労働日について労働したものとみなし、合算して8割以上の出勤率があれば、4月1日に11労働日の年次有給休暇が付与されます。
5 年次有給休暇中の賃金
年次有給休暇1日分の賃金
「年次有給休暇の取得日における賃金」は、下記のいずれかを就業規則等で選択して支払います。
① 平均賃金
② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
なお、労使協定を締結することにより、「健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額」とすることも可能です。
時間単位年次有給休暇の1時間分の賃金
時間単位年次有給休暇を取得した場合の賃金は、下記の計算式により算出します。
年次有給休暇の取得日における賃金 ÷ 時間単位年次有給休暇の取得日の所定労働時間
投稿者プロフィール
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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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