皆さんこんにちは。社会保険労務士あかつき事務所の出口です。
この記事では、年次有給休暇について解説します。
- 1. 年次有給休暇とは
- 2. 年次有給休暇の発生要件
- 3. 年次有給休暇の法的性質
- 3.1. 使用者の承認は必要か?
- 3.2. 利用目的を制限できるか?
- 3.3. 不利益な取扱いをしてよいのか?
- 3.4. 年次有給休暇の買い上げをしてよいのか
- 4. 年次有給休暇の付与と消化
- 4.1. 原則的な付与日数
- 4.2. 比例付与
- 4.3. 付与日数の繰越し
- 4.4. 時間単位の付与
- 4.5. 計画的付与
- 4.6. 斉一的取扱い
- 4.7. いつまでに請求する必要があるか
- 4.8. 5日消化義務
- 5. 年次有給休暇中の賃金
- 5.1. 年次有給休暇1日分の賃金
- 5.2. 時間単位年次有給休暇の1時間分の賃金
- 6. 年次有給休暇管理簿
年次有給休暇とは
「年次有給休暇」とは、使用者が、労働者に賃金を支払いながら労働日における労働の義務を免除する(休暇を与える)制度のことです。
企業側のメリット
労働者が年次有給休暇を取得すると、
① 休暇とることでリフレッシュし、効率的・創造的な働き(労働生産性の向上)を実現できる
② 業務を引き継がせる代替要員の多能化を促進する
③ 休暇を利用して労働者がキャリアアップを図ることができる
などといった、業務の効率化、人材の育成につながり、企業経営にも良い影響をもたらすことになります。
国としても、日本の経済成長・少子化対策などの理由に、年次有給休暇の取得を促進しています。
積極的に年次有給休暇を活用し、生産性の向上を図りましょう!
年次有給休暇の発生要件
年次有給休暇の権利は、下記の2つの要件を満たすことで発生します。(労働基準法第39条第1項)
① 一定期間の継続勤務
年次有給休暇の権利が発生するには、雇入れから6か月間、継続勤務をする必要があります。
その後は、継続勤務年数1年毎に、新たな年次有給休暇の権利が発生します。
なお、「継続勤務」とは、労働契約の存続期間(在籍期間)をいいます。(昭和63年3月14日基発150号等)
継続勤務として扱われるもの
下記の場合は、継続勤務として扱われ、その勤続年数が通算されます。
・ 定年後再雇用(再雇用まで相当期間がないこと)した場合
・ 臨時工、パート等を正社員に切り替えた場合
・ 休職者が復職した場合
・ 在籍出向した場合
など
② 全労働日の8割以上の出勤率
出勤率の計算の対象期間について、下記の計算式により算出した「出勤率」が8割以上であることが必要です。
出勤した日 ÷ 全労働日 = 出勤率
【 出勤率の計算の対象期間 】
・ 雇入れ日から6か月間
・ 雇入れ日から6か月経過した日以後は、1年間ずつ
※ なお、出勤した日に含める期間・日、及び全労働日から除外する日は下記のとおりです。
「出勤した日」に含める期間・日
・ 労働災害により休業した期間
・ 育児・介護休業期間
・ 年次有給休暇を取得した期間
・ 労働者の責めに帰すべき事由によらない不就労日
「全労働日」から除外する日
・ 不可抗力による休業日
・ 使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日
・ 正当なストライキその他正当な争議行為により労務の提供が全くされなかった日
・ 所定の休日に労働した日
・ 代替休暇を取得して終日勤務しなかった日
年次有給休暇の権利の発生については、上記の2要件を満たせば当然に発生するため、労働者の請求は不要です。
年次有給休暇の法的性質
使用者の承認は必要か?
労働者が年次有給休暇を「請求する」といった場合、それは単に休暇の時季を「指定する」ことを意味します。(時季指定権)
労働者が年次有給休暇を請求する、すなわち休暇の時季を指定する(時季指定権を行使する)と、その指定した日について年次有給休暇の効果(指定した日の労働義務の免除及び賃金支払請求権)が発生します。
これは、労働者が年次有給休暇を請求することに対し、使用者の承認を要しないことを意味します。
「指定」ではなく「請求」と解釈した場合の不都合
年次有給休暇の成立要件を、労働者による「休暇の請求 (=休暇の付与(使用者が労働義務の免除の意思表示をすること)の申込み) 」と解釈すると、これに対する使用者の「承認( =休暇付与の義務(労働義務を免除する意思表示をする義務)を履行すること )」が必要となります。(債権と債務の関係)
すると使用者がその承認をする義務を履行しないならば、労働者は、改めて年次有給休暇の承認を訴求するという迂遠な方法をとる必要がでてきます。
これでは、年次有給休暇の趣旨・目的に反し適切ではないため、この考え方は採用されていません。
(昭和48年3月2日白石営林署事件)
利用目的を制限できるか?
年次有給休暇の利用目的は、労働基準法が関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由とされています。 (白石営林署事件:昭和48年3月2日)
よって、就業規則などで、年次有給休暇の利用目的に制限を設けることはできません。
それでは、労働者が年次有給休暇を請求する際に、使用者がその利用目的を尋ねこともできないのでしょうか?
一般的には、その利用目的を尋ねることで、労働者が年次有給休暇に取得を躊躇することもありえますので控えたほうがよいでしょう。
ただし、使用者が時季変更権を行使する段階では、利用目的を尋ねることが認められる場合があります。(電電公社此花局事件:昭和57年3月18日)
使用者が、時季変更権を適法に行使するための要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」の有無を判断するにあたっては、労働者の事情も考慮されるため、この労働者の事情を確認する範囲において利用目的を尋ねることができます。
不利益な取扱いをしてよいのか?
使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対しては、賃金の減額など、その他の不利益な取扱いをしないようにしなければならないと規定されています。(労働基準法附則136条)
年次有給休暇の買い上げをしてよいのか
年次有給休暇の目的は、正しく休暇をとることにあります。
したがって、年次有給休暇の買い上げは原則として認められません。
ただし、以下のような場合には、例外的に認められます
買い上げが例外的に認められる場合
① 法定の基準を超えて年次有給休暇を付与している場合は、その超える部分について買い上げることができます。
② 退職により未消化となった年次有給休暇や、時効によって消滅した年次有給休暇については買い上げることができます。
年次有給休暇の付与と消化
原則的な付与日数
年次有給休暇の発生要件を満たした場合は、雇入れ日から6カ月を経過した日に10労働日の年次有給休暇が付与され、以降1年後ごとに10労働日に所定の日数を加えた新たな年次有給休暇が付与されます。(労働基準法第39条第1項、第2項)
なお、新たな付与日数は20労働日(加算日数は10労働日)が限度であるため、勤続年数6年6か月から1年ごと(7年6か月、8年6か月…)の付与日数は20労働日で足ります。
| 継続勤務期間 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 加算日数 | - | +1日 | +2日 | +4日 | +6日 | +8日 | +10日 |
なお、「8割以上の出勤率」については、年次有給休暇の発生要件ではありますが、付与日数の加算要件ではありません。
したがって、例えば、雇入れ日からの継続勤務期間6か月について8割以上の出勤率がなく10労働日の年次有給休暇が付与されなかったとしても、6か月が経過した日から1年6カ月の間の1年間の出勤率が8割以上であれば、継続勤務期間1年6か月を経過した日に「11労働日」の年次有給休暇が付与されることになります。
比例付与
労働日数・労働時間の短い労働者については、下記のような原則的な付与日数よりも少ない週所定労働日数に応じた日数の年次有給休暇が付与されることになります。(比例付与:労働基準法第39条第3項)
比例付与対象者と付与日数
① 比例付与対象者
比例付与の対象となる労働日数・労働時間の短い労働者とは、
1週間の所定労働日数が4日以下(週以外の期間で所定労働日数を定めている場合は、1年間の所定労働日数が216日以下)であり、
かつ 1週間の所定労働時間が30時間未満 の労働者です。
※ なお、比例付与の対象となるか否かは、各継続勤務期間の経過した日(各年次有給休暇の発生日)において、上記の要件を満たしているかで判断されます。
② 付与日数
比例付与対象者の年次有給休暇の付与日数は、下記の計算式により算出されます。
原則的な付与日数 × 週所定労働日数 ÷ 5.2日 = 付与日数(端数は切捨て)
例:継続勤務期間6か月経過した日において、週の所定労働日数が3日(週労働時間は30時間未満)の労働者
10労働日 × 3日 ÷ 5.2日 = 5.76…日 ⇒ 5日
付与日数の繰越し
年次有給休暇の権利は、各年次有給休暇の権利が発生する勤続年数の経過日から起算して2年間を経過すると時効により消滅します。(労働基準法第119条)
したがって、年次有給休暇は、翌年まで繰越しが認められます。
例えば、継続勤務期間6か月を経過した日に発生した10労働日の年次有給休暇は、継続勤務期間2年6か月を経過する日までの間に請求することができ、さらに継続勤務期間1年6か月を経過した日に11労働日の年次有給休暇が付与された場合において、最初の10労働日の年次有給休暇を1日も消化していなかったとすると、当該1年6か月を経過した日に、10労働日+11労働日=21労働日の年次有給休暇の権利があることになります。
なお、このとき「繰り越された10労働日の年次有給休暇」と「1年6か月を経過した日に付与された11労働日の年次有給休暇」については、いずれを優先して消化するべきなのか、労働基準法には定めがありません。
そのため、時効が迫っている「繰り越された年次有給休暇」から消化するほうが労働者には有利ではありますが、就業規則において、今回付与された年次有給休暇を優先的に消化すると定めることも可能です。
※ 民法第488条の規定(弁済の充当)に従うとの見解もありますが、債務の履行を観念しない年次有給休暇の請求に妥当するかは疑問があります。
時間単位の付与
年次有給休暇は、心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることを目的としていることから、1労働日を単位として付与することを原則としています。
しかし、年次有給休暇の取得促進や時間単位での取得の希望があるなど理由から、労使協定の締結を条件に、1年に5労働日を限度として、時間単位の年次有給休暇を付与することが認められています。
時間単位年次有給休暇の労使協定
時間単位年次有給休暇を実施するために締結する労使協定には、下記の事項を定める必要があります。
・ 時間単位年次有給休暇を与えることができる労働者の範囲
・ 時間単位年次有給休暇の付与日数の上限(5日以内が限度。前年度の繰越分を含む。)
・ 時間単位年次有給休暇の1日の時間数(1日の所定労働時間(端数は切上げ)以上の時間とすること)
・ 1時間以外の時間を単位として付与する場合のその時間数
なお、当該労使協定は、労働基準監督署長に届出ること要しません。
計画的付与
年次有給休暇の消化は労働者の任意ですが、それに任せていると有給休暇を消化しなかったり、業務の遂行の見通しが立たないという事態が生じます。
そこで、労使協定を締結することで、付与されている有給休暇の5日を超える部分については、使用者が時季を指定して与えることが認められています。(計画的付与:労働基準法第39条第6項)
5日を超える部分とは、例えば年次有給休暇が12日付与されるとした場合、12日-5日=7日が計画的付与として消化することができる上限となります。
計画的付与の方法は、事業所での一斉付与、班別での交代制付与、個人別付与などがあります。
また、計画的付与をした場合は、労働者の時期指定権、使用者の時季変更権のいずれもが行使できなくなります。
なお、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められていません。
斉一的取扱い
入社日の異なる労働者が複数人いる事業場では、年次有給休暇の発生する日が複数存在することになり管理が大変です。
そこで年次有給休暇の管理を簡易にするため、下記の要件を満たすことを条件に、全労働者の年次有給休暇の発生日を統一することが可能です。(斉一的取扱い:平成6年1月4日基発1号)
① 出勤率の算定にあたっては、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること
② 翌年度以降も、初年度で繰り上げた期間と同じ、又はそれ以上の期間、法定の年次有給休暇の発生日より繰り上げること
斉一的取扱いの例
斉一的な年次有給休暇の発生日を毎年「4月1日」としたとき
・雇入れ日が1月1日の労働者(6カ月経過日は10月1日)
⇒ 1月1日~3月31日については実際の出勤率を算定し、4月1日~9月30日については全労働日について労働したものとみなし、合算して8割以上の出勤率があれば、4月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。
・雇入れ日が9月1日の労働者(6カ月経過日は3月1日)
⇒ 最初の6か月については、実際の出勤率を算定し、3月1日に10労働日の年次有給休暇が付与されます。(当該年次有給休暇の発生日は、4月1日ではありません。)
⇒ 次の1年間は、3月1日~3月31日については、実際の出勤率を算定し、4月1日~翌年2月28日については全労働日について労働したものとみなし、合算して8割以上の出勤率があれば、4月1日に11労働日の年次有給休暇が付与されます。
いつまでに請求する必要があるか
年次有給休暇は、労働者が取得日として指定した「労働日」の労働義務を免除するものです。
「労働日」は、原則として午前0時から午後12時までの間とされているため、労働者は、取得日の午前0時より前、
つまり、労働者は、取得日の前日までには、年次有給休暇の取得を請求をしなければならないことになります。
しかし、多くの会社では、就業規則で「年次有給休暇の取得日の○日前までに会社に請求すること」といったような請求期限を設けています。
これは、急に年次有給休暇を取得されると、業務に支障が出るなどの理由から、労働者に取得日まで一定期間を空けて請求するようにさせ、業務の調整を行うための措置と考えられます。
このような年次有給休暇の請求に期限を設けること自体は労働基準法に違反しません。
しかし、取得日までの間が、長期間になりすぎると公序良俗に反し無効となる可能性があるので注意が必要です。(取得日の2、3日前くらいが妥当と思われます。)
また、就業規則に定めた請求期限を過ぎてから請求がなされたような場合でも、後述する適法な時季変更権を行使することはできますが、年次有給休暇の取得自体を拒否することはできません。
したがって、就業規則に請求期限を設ける意味は使用者側からの「お願い」程度のもと思われます。(厚労省が公開しているモデル就業規則にも請求期限は設けていません。)
※ 就業規則で請求期限を守らないことを懲戒処分の対象として定めている場合は、その違反の程度によっては懲戒処分をすることはあり得ます。
5日消化義務
年次有給休暇を10日以上付与された場合は、その付与日から1年以内に5日消化させる義務が使用者にはあります。
なお、労働者が自ら時期指定権を行使して5日取得したり、計画的付与により5日消化した場合は、使用者は、5日消化させる義務が消滅します。
この使用者が負う5日消化義務の履行する際には、あらかじめ年次有給休暇を消化することを明らかにしたうえで、その時季について労働者の意見を聴き、使用者が時季を指定して消化させることになります。
このとき労働者から聴取した意見を尊重するように努める義務はありますが、必ずしもその意見通りの時季に与える必要はありません。
年次有給休暇中の賃金
年次有給休暇1日分の賃金
「年次有給休暇の取得日における賃金」は、下記のいずれかを就業規則等で選択して支払います。
① 平均賃金
② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
なお、労使協定を締結することにより、「健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額」とすることも可能です。
時間単位年次有給休暇の1時間分の賃金
時間単位年次有給休暇を取得した場合の賃金は、下記の計算式により算出します。
年次有給休暇の取得日における賃金 ÷ 時間単位年次有給休暇の取得日の所定労働時間
年次有給休暇管理簿
年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日を労働者毎に明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年間(当分の間、3年間)保存する必要があります。
投稿者プロフィール

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東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。
1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。
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