休日労働の割増賃金

1 休日とは

休日」とは、労働者が労働契約において労働の義務を負わない日のことです。

休日は、原則として暦日(午前0時から午後12時まで)によることとされています。(昭和23年4月5日基発535号)

2 休日の特定

多くの会社では、就業規則や労働契約などで、あらかじめ休日を特定しています。

例えば、「土曜日・日曜日を休日とする」などのように曜日を特定して休日を定めるのが一般的です。

しかし、必ずしも休日を特定する必要はありません。

「週に2日の休日を与える」などのように定めることも可能です。

3 法定休日

休日を特定する必要はありませんが、労働基準法第35条第1項で「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。」と規定しているため、労働者に、最低でも週に1回は休みを与える必要があります。

例外的に、4週間を通じ4日以上の休日を与えれば、週休1日制をとる必要はありません。(労基法35条第2項)

ただし、この4週4休制(「変形休日制」といいます)を採用するには、就業規則などで、4週間の始まりの日(起算日)を特定する必要があります。

これら、「週1回の休日」又は「4週間に4日の休日」のことを「法定休日」といいます。

4 所定休日

法定休日とは別に与える休日のことを「所定休日」といいます。

多くの会社は労働者に対して法定休日の他に、この所定休日を与えています。

その理由は、労働基準法第32条第1項にあります。

労働基準法第32条第1項では「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」と規定していますので、1日8時間労働の労働者は、週5日まで(8時間×5日=40時間)しか働かせることができません。

よって、週5日の1日8時間勤務の労働者に、週2回の休日を与えなければ、労働基準法第32条第1項の規定に違反することになります。

こうした理由から、会社は、週1回の法定休日の他にもう1日、所定休日を与えて、週休2日としているのです。

5 法定休日の労働における割増賃金

会社は、社員を法定休日に労働させた場合、35%の休日労働割増賃金を支払う必要があります。(労働基準法第37条)

具体的な計算方法については、賃金の支給形態によって異なります。

ここでは、月給者と時給者の計算方法について説明します。

①月給者の場合

月給額 ÷ 月の所定労働時間* = 1時間あたりの賃金額

1時間あたりの賃金額 × 1.35 × 法定休日における労働時間 = 法定休日における割増賃金

※月の所定労働時間が毎月異なる場合は、月平均の所定労働時間で計算します。

②時給者の場合

時給額 × 1.35 × 法定休日における労働時間 = 法定休日における割増賃金

※ なお、会社が社員を法定休日に労働をさせるには、労働基準監督署に36協定を届出るか、非常災害時又は公務のため臨時の必要がある場合でなければなりません。

6 法定休日か所定休日か

前述のように「法定休日」に労働させた場合は、35%の休日労働割増賃金を支払う必要があります。

しかし、「所定休日」に労働をさせた場合には、35%の休日労働割増賃金を支払う必要はありません。(ただし、所定休日に労働したことで週40時間を超える場合は25%の時間外労働割増賃金を支払う必要があります。)

そうすると週休2日制をとっている会社では、週の休日のうち、どちらが法定休日でどちらが所定休日なのかを判断する必要があります。

そのためには、法定休日を特定する必要があります。

週休2日制をとっている会社の法定休日の特定方法

土曜日日曜日を休日としている会社」を例に、下記のように取り扱います。

①就業規則などで法定休日を特定している場合

就業規則などで、特定した日が、法定休日になります。

例えば、就業規則で「日曜日を法定休日とする」旨の定めがあれば、日曜日が法定休日となります。

②就業規則などで法定休日を特定しない場合

一方の曜日のみ労働させたときは、もう一方の曜日が法定休日となります。(結論として、法定休日の労働は発生しません。)

両方の曜日に労働させたときは、暦週(日曜日から始まる1週間)の最後の休日を法定休日となります。(この例では、土曜日が法定休日となります。)

7 休日の振替と代休

休日の振替

会社は、就業規則などで休日を振替えることができる旨を定めること要件に、あらかじめ、休日として指定した日を労働日とし、その代わり他の労働日を休日とすることができます。

これを「休日の振替」といいます。

休日の振替を行なって、休日と指定されていた日に労働した場合は、その休日が法定休日であったとしても35%の休日労働割増賃金を支払う必要はありません

その日は、休日ではなく「労働日」となったからです。

ただし、この日に労働することにより、週40時間を超える場合は25%の時間外労働割増賃金を支払う必要はあるので注意してください。

また、休日の振替を行なったとしても、労働基準法第35条第1項の「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」という要件を満たさなければ、有効な休日の振替にはならないのでご注意ください。

代休

休日の振替の要件を満たさず、休日に労働させた後、その代償として他の労働日を休日とすることを「代休」いいます。

休日の振替とは違い、休日は休日のままであるため、社員を休日に労働させたことになります

よって、その休日が法定休日であれば35%の休日労働割増賃金を支払う必要があります

また、代休を与えるかどうかやどのようにして与えるかは法律に定めがないため、就業規則などで自由に定めることができます。

8 まとめ

以上、休日労働について解説してきました。

休日労働のルールは複雑で、休日労働割増賃金の計算は、給与計算時によく見落とされるポイントのひとつです。

ルールをしっかり把握して、割増賃金の計算に間違いがないようにしましょう。

投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。