令和4年10月から施行!改正・育児介護休業法のポイント!

令和3年6月、国会で育児介護休業法が改正されました。

本稿では、改正育児介護休業法のポイントを詳しく解説していきます。

1 改正の背景

近年、男性の育児休業は増加傾向にありますが、令和元年時点における男性の育児休業取得率は7.48%と依然低く、政府の目標とする取得率(令和2年までに13%)の約半分にとどまっています。それに対して女性の育児休業取得率は83.0%と圧倒的に多く、女性のみに育児の負担が集中している現状があります。

男性の育休取得率が低い原因としては、職場で育休を取得しづらい雰囲気があることや、会社が男性に育児休業制度を周知していないこと、育児休業制度自体が利用しにくいものであることなどが挙げられます。

これらを改善し、男性の育児休業取得を促進することが今回の改正の目的といえます。

2 男性版産休(出生時育休制度)を新設

改正前は、産後8週間以内に1回の育児休業(パパ休暇)と産後8週間後にもう1回の育児休業の取得が可能でした。

男性版産休(出生時育休制度)の新設により、産後8週間以内の男性の育児休業(パパ休暇)の内容が変わります。

改正前
子の育児休業の申出は特別な事情がない限り再度取得することができませんが、子の出生後8週間の期間内にした育児休業については特別な事情がなくても再度取得を申出ることができます。(育児介護休業法第5条第2項)

改正後

子の出生後8週間の期間内に、4週間までの取得が可能な出生時育児休業制度を新設しました

【ポイント】

① 原則として休業開始の2週間前までに申出なければなりません。

② 休業期間4週間を分割して2回取得が可能です。

③ 労使協定を締結し、労働者の個別の同意を得るなどすれば、休業期間中の就労も可能です。

④ 雇用保険から出生時育児休業に対応する育児休業給付金を創設する予定となっています。

※ 施行日は、令和4年10月1日

3 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の義務付け

男性正社員が育児休業を取得しなかった理由としては、

・ 会社で育児休業制度が整備されていなかったから(23.4%)

・ 職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから(21.8%)

が多くを占めており、育児休業の制度の整備と取得しやすい環境づくりが求めらています。

(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(平成30年度))

改正前
育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務付ける規定はない。

改正後

研修や相談窓口を設置するなどをして、育児休業を取得しやすい 雇用環境の整備をすることを事業主に義務付けました

※施行日は、令和4年4月1日

4 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け

育児休業の取得割合は、育児休業制度を周知している会社ほど高く、周知していない会社ほど低くなっています。

また、男性正社員が育児休業等を取得するにあたって、会社側からの働きかけをしていない会社の割合は、64.7%と非常に多い状況です。

(厚生労働省委託事業「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社))

この状況を踏まえ、下記のように改正がなされました。

改正前
育児休業に関する事項を労働者に対し個別に周知することを努力義務として定めているのみでした。(育児介護休業法第21条)
※努力義務ですので、実際に周知している必要はありません。

改正後

労働者又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出をしたときに、当該労働者に対し新制度及び現行の育児休業制度等を周知することを義務付け、さらにこれらの制度の取得意向を確認するための措置も義務付けられました。

【ポイント】

①周知の方法は、面談での制度説明や書面等による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択とする予定となっています。

②制度の取得意向確認において、取得を控えさせるようなことはしないでください。

③労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。

※施行日は、令和4年4月1日

5 育児休業の分割取得が可能に

改正前の育児休業制度では、育児休業の申出は原則として1回に限られ再取得することができませんでした。

しかし、育児休業を取得した男性正社員のなかで、育児休業を再度取得したいと考えている人の割合は20.7%とニーズがあります。

(厚生労働省委託事業「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社))

そこで、このニーズに応えるため、以下のように改正がなされました。

改正前
育児休業は、原則として1回に限り申出ることができる。(育児介護休業法第5条第2項)

改正後

育児休業(出生時育児休業を除く)は、分割して2回まで取得が可能となりました。

※出生時育児休業と合わせると4回まで分割取得が可能ということになります。

施行日は、令和4年10月1日

6 育児休業取得率の公表の義務付け

就職時、現在の会社を選ぶにあたり、当該会社の男女別育児休業の取得率を「自分でしらべたり、目にした」と答えた人の割合は、女性10.1%・男性4.8%となっています。

一方で、現在の会社を選ぶにあたり、男女別育児休業の取得率を「わかっていたら良かった」と答えた人の割合は、女性32.9%・男性27.1%とギャップが大きくなっています。

(独立行政法人 労働政策研究・研修機構(2020年)「女性活躍と両立支援に関する調査」)

そこで、育児休業取得率の情報の発信を促進するため、下記のように改正がなされました。

改正前
育児休業の取得状況を義務付けられているのは「プラチナくるみん企業」のみでした。

改正後

従業員1000人超の企業を対象に、育児休業の取得の状況について公表を義務付けました

※施行日は、令和5年4月1日

7 有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和

統計によると、女性の非正規社員が育児休業を取得したかったができなかった人の割合は、14.0%もいます。

(「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社))

そこで、改正により非正規社員のうち有期雇用労働者の育児休業を取得しやすくするため、取得要件の緩和がなされました。

改正前
有期雇用労働者が育児休業を取得することができる要件は、

① 引き続き雇用された期間が1年以上であること

② 子が1歳6ヶ月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと

改正後

①の「引き続き雇用された期間が1年以上であること」の要件は廃止されました。

②の要件は、存置

※改正前と同様、労使協定によりに、引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者については、育児休業を取得できないとすることは可能です。

施行日は、令和4年4月1日

8 施行日のまとめ

 令和4年4月1日から施行

・育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の義務付け(3)

・妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(4)

・ 有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和 (7)

② 令和4年10月1日から施行

・ 男性版産休(出生時育休制度)を新設 (2)

・ 育児休業の分割取得が可能に (5)

③ 令和5年4月1日から施行

・ 育児休業取得率の公表の義務付け (6)

※括弧の数字は、各タイトルの数字です。

9 まとめ

男性社員の育児休業の促進は、ジェンダー平等の実現や少子化問題の解決のためにとても重要な課題です。

今般の改正は令和4年4月からですが、それまでにしっかりと新制度を理解しておくとともに、会社として社会が何を実現すべきなのかも意識しながら新制度に対応していきましょう。

投稿者プロフィール

八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
八王子の社会保険労務士・司法書士 出口勇介
東京都八王子市にて、社会保険労務士・司法書士をしております。

1988年3月22日生まれ
三重県伊勢市出身(伊勢神宮がすぐ近くにあります。)
伊勢の美しい海と山に囲まれて育ったため穏やかな性格です。
人に優しく親切にをモットーとしております。
写真が趣味でネコと花の写真をよく撮っています。